ウィリアム・カペル 幻のフリック・コレクション・リサイタル レビュー





ウィリアム・カペル 幻のフリック・コレクション・リサイタル

録音:1953年3月
収録曲:コープランド / ピアノ・ソナタ(1941)、ショパン / 夜想曲 Op.55-2、マズルカ Op.33-3、幻想ポロネーズ Op.61、ムソルグスキー / 展覧会の絵、 シューマン / 「子供の情景」Op.15 より『見知らぬ国と人々から』、スカルラッティ / ソナタ K.380


■万人に聴いていただきたい名盤。■

   これは、カペルの死後、かなりの時間が経過してから 発見された録音で、ニューヨークの私設美術館「フリック・コレクション」におけるリサイタルを アンコールに至るまで完全収録したものである。緊張感の張り詰めたコンサート会場での演奏とは異なり、 日曜日の午後のアットホームな雰囲気の中行われた演奏会ということもあり、程よく肩の力がぬけてはいるが、 演奏の完成度の高さ、センスの煌きは特筆に価する。
   いずれの曲を取って見ても素晴らしい演奏だが、特にショパンのノクターンは 宝箱にしまっておきたくなるような珠玉の名演。図らずも涙腺が緩んでしまうので要注意。
   展覧会の絵も、 輝く音色と卓越した技術により文句のつけようがない余裕の演奏。 ”リモージュ”の最後ではあまりの速さに目が点になってしまった。 また、”卵の殻をつけた雛の踊り”におけるコミカルな表現もなかなかシャレている。 カペルのウィットに富む一面が十二分に発揮された名演といえよう。
   コープランドのソナタはあまり馴染みがない曲かもしれないが、 聴くほどに「なるほどな」と思わせる明瞭な演奏である。 これらの作品におけるカペルの演奏は、まるで緻密に描かれた作品の設計図を眺めるような楽しさだ。彼の作品に対する鋭い洞察力は作曲家自身にも大絶賛された。
   アンコールのシューマンとスカルラッティも・・・ひとつひとつ言葉で説明するのはもどかしい。とにかく聴いてみられたし。


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