収録曲:
(Disc1)ラフマニノフ / ピアノ協奏曲 第2番、同 / パガニーニの主題によるラプソディ、プロコフィエフ / ピアノ協奏曲 第3番、
(Disc2)J.S.バッハ / パルティータ 第4番、ショパン / ピアノ・ソナタ 第3番、アルベニス / エボカシオン、リスト / ペトラルカのソネット、ハンガリー狂詩曲 第11番、メフィストワルツ 第1番
Robin Hood Dell Orchestra/William Steinberg(Pf協 No.2)
Robin Hood Dell Orchestra/Fritz Reiner(ラプソディ)
Dallas Symphony Orchestra/Antal Dorati(プロコフィエフ)
■まず最初の一枚としてオススメします。■
カペルの演奏活動初期から晩年までの名演がてんこ盛りのゴージャスなアルバム。
とりあえずカペルというピアニストの全容を知るのには便利なアルバムだ。装丁も豪華。
Disc1では、ピアノ協奏曲の分野でも人気が高いラフマニノフの第2番、大変美しい旋律を持つ
第18変奏がCMにも多用されるパガニーニ・ラプソディ、わりに通好みのプロコフィエフの第3番が
収められている。いずれも技巧的で派手な協奏曲だが、カペルの並外れたテクニックに焦点を
当てるならば、これほどうってつけのプログラムはあるまい。カペルの切れ味の良いテクニック、低音から超高音までそそり立つような音色が
楽しめると同時に、各オケの競演(?)ぶりも素晴らしい。素直に音が出てくる弦楽器セクションと
自己主張の強い管楽器セクションがいかにもアメリカ的なサウンドを聴かせてくれる。
ピアニストもオケも楽しんで競り合っているようで、非常にエキサイティングな演奏だ。
ソロを集めたDisc2では、多様なプログラムによりカペルの
様々な魅力を一度に味わうことが出来る。カペルはデビュー当時、例えばメフィストワルツで
聴かれるとおり技巧的で
華やかな印象のピアニストであったが、晩年にはどこか神々しいものさえ感じさせる
深い情感をたたえた演奏をするに至った。余計な装飾を取り除き、音色の作り方のみで
全てを表現するような研ぎ澄まされた演奏。天才の中でもほんの一握りにしか許されないその
偽りのない表現にカペルは若干30歳にして到達していたのである。アルバム冒頭に収められている
バッハのパルティータや、先に紹介したフリック・コレクションでのショパンなどは
その典型的な例である。抑えられた背景色の中でこそカペルの金色の音色が最も映えることを
彼自身が一番よく知っていたのであろう。
一方、センスが光るアルベニスもはずせない。地味だが難曲、という部類に入るこの
作品だが、カペルの音の処理の仕方は絵画的でさえある。全ての音を入念に色づけしながら
全体のバランスを決して崩さないあたりが流石である。
ショパンのソナタ第3番は歴史的名演。
和音の重ね方のバランス、媚のないリズム、明晰なアーティクレーション。
いずれをとっても他の追随を許さないものである。今風に(?)いうならば「cool!」。
理屈ぬきに「かっこいい!」のである。
しかし、それらを際立たせているのは、何と言ってもカペルのあの音色であることは
明らかである。やはり、音色ひとつなのかもしれない、ピアニストというものは・・・!